1.犬の歯石を放置するとどうなる?知っておきたいリスク
歯垢(プラーク)は、食後わずか2~3日で硬い歯石へと変化するといわれています。いったん石のように固まってしまった歯石は、毎日のブラッシングだけでは取り除くのが難しくなります。犬は年齢を重ねるにつれて歯周病をもつ子が増えるといわれており、歯石と歯周病はとても身近なトラブルです。進行すると歯が抜けたり顎の骨に影響が出たりするだけでなく、心臓や腎臓など全身の健康にかかわることもあるとされています。歯石の放置で起こりやすい主なトラブルには、次のようなものがあります。
- 口臭がどんどん強くなる
- 歯ぐきが赤く腫れ、出血しやすくなる
- ごはんを食べにくそうにする、食べるのが遅くなる
- 歯がぐらつき、最終的に抜け落ちる
こうした症状は、ある日突然あらわれるわけではなく、じわじわと進んでいくのが特徴です。気になる変化が出る前に、早めに動物病院へ相談してみましょう。
2.こんなサインが出たら受診の目安!動物病院に連れて行くタイミング
「元気に食べているから大丈夫かも」と思う飼い主さんも少なくないかもしれません。ただ、犬は痛みや不調を外に出しにくい動物です。次のサインがひとつでも当てはまったら、動物病院への相談を考えてみましょう。
- 口臭が以前より強くなった、腐ったようなニオイがする
- 歯ぐきが赤くなっている、腫れている
- 硬いフードやおやつを嫌がるようになった
- 歯の表面に黄~茶色い汚れが目立つ
- 口周りを触られるのを嫌がるようになった
とくに小型犬は歯が密集していて、歯石や歯周病が進みやすい傾向があるといわれています。「まだ平気かな」と感じたときこそ、早めに獣医師へ相談してみると安心ですね。
3.動物病院ではどんなことをするの?受診の流れと麻酔について
歯石は家庭でのブラッシングでは取り除けないため、除去には動物病院での処置が必要になります。ただし、病院に行ったら必ずその日のうちに処置が行われるわけではありません。まずはかかりつけの獣医師に相談し、愛犬の口腔内や全身の状態を確認してもらいます。歯石の量や歯周病の進み具合、年齢、持病の有無などを総合的に見たうえで、処置が必要かどうか、いつ行うのがよいかを獣医師と一緒に考えていきます。場合によっては、すぐに処置を行わず、おうちでのケアや定期的なチェックから始めることもあります。処置を行う場合は、全身麻酔をかけて行うのが一般的です。近年は無麻酔で歯石を取るサービスも見かけますが、日本獣医師会などの専門団体はこの方法を推奨していません(※)。歯ぐきの奥にある歯石に届きにくいことや、愛犬に大きな負担をかけるリスクがあるためです。受診前の疑問や不安は、遠慮なく獣医師に伝えてみましょう。愛犬の状態に合わせて、丁寧に相談に乗ってもらえますよ。※:
無麻酔下での歯石除去の危険性、歯科処置の危険性
歯石除去に関する公益社団法人日本獣医師会からのお知らせ
4.病院と並行してできる!毎日のデンタルケア習慣
病院での処置と並行して続けたいのが、おうちでの毎日のケアです。歯石のもととなる歯垢は、日々のブラッシングで取り除くことができるため、習慣化できるとその後の歯の健康がぐっと守りやすくなります。毎日のケアで意識したいポイントは、次のとおりです。
- 歯ブラシや指サック型ブラシで、毎日やさしくみがく
- 歯磨き粉代わりになるデンタルジェルやデンタルスプレーを活用する
- 歯磨きガムやデンタルおもちゃを取り入れ、遊びの中でケアを補う
- 週に一度は口の中全体を観察し、歯ぐきの色や汚れの変化に気づく習慣をつける
歯みがきを嫌がる愛犬には、いきなりブラシを入れるのではなく、少しずつ段階を踏んで慣らしていくのがおすすめです。「口を触っても平気」→「唇をめくっても平気」→「前歯だけみがく」→「奥歯までみがく」と段階的に進め、できたらたくさんほめてあげましょう。うれしい体験と結びつくことで、歯みがきタイムが愛犬にとって楽しい時間へと変わっていきます。忙しい日は、すべての歯を完璧にみがけなくても大丈夫です。1日1本でも、毎日続けることが何より大切ですよ。
5.まとめ
犬の歯石は放置すると歯周病へとつながり、全身の健康にも影響することがあります。口臭や歯ぐきの色に気になる変化が見られたら、早めに動物病院へ相談しましょう。処置の要否は獣医師が愛犬の状態を見て判断してくれるので、必ずしもすぐに麻酔処置をするわけではありません。病院でのケアと毎日のデンタルケアを両立して、愛犬の健やかな口元を守っていきたいですね。
監修者プロフィール
獣医師:中野 崇先生
ペテモどうぶつ医療センター幕張新都心 内科医長
イオンペットアカデミー非常勤講師
・酪農学園大学獣医学部卒業
・北海道内の動物病院にて 3 年間勤務
・株式会社 VSC (現イオンペット) 入社し、千葉市の動物病院にて院長として勤務 (7 年)
・ペテモどうぶつ医療センター幕張新都心にて主に内科の診療に従事 (11年)